はじめに ~サイクロン集塵機ってなんなの?を解説する前に
こんにちは!
集塵機と集塵ノズルメーカーの株式会社ディーオです。
私達は工場で発生するホコリ・粉塵対策用の装置をオーダーメイド製造販売しております。
集塵ノズルを設計している中で、最近ある疑問を持つようになりました。
「家庭で使われる掃除機ではサイクロンが主流になりつつあるのに、
どうしてサイクロン集塵機は主流にならないのでしょうか???」
集塵機の原理は掃除機に似ているので、サイクロン掃除機が流行るのであれば、
同じようにサイクロン集塵機が流行っても良いと思うのですが、
なぜか集塵機においては、サイクロン方式の採用はまだまだ少ないように思います。
この疑問について徹底的に調べてみましたので、本記事を通じて皆様に共有させて頂きたいと思います。
ぜひ最後まで読んでください。
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そもそもサイクロン式集塵機とは何?
10年くらい前から、「吸引力が衰えないサイクロン掃除機、ダイ○ン」というCMが流れ始めました。
そもそもサイクロンとは何ぞや?というところですが、
一言で言うと、フィルターを使わない掃除機や集塵機の事です。
消耗品を購入する必要がなく、ゴミ捨てはワンタッチでそのままゴミ箱に捨てる事ができるので、
楽というメリットがございます。
専門的に話すと、吸引口から吸ったゴミが、ダストボックス内で遠心力によって空気と分離させる仕組みとなっています。
このようにボックス内を円錐にすることで、ゴミが円錐の周りをクルクル回りながら下に落ちてくれます。
その結果、吸引したゴミをボックス内底面に溜めて、綺麗な空気だけを外に排出する事が出来るようになり、
フィルターパックを使わない掃除機を実現しました。
一方、通常のフィルターパック式掃除機の場合、遠心力などは一切使わず、
単にゴミをフィルターパックに吸い込んで強制的に空気とゴミを分離させています。
しかし、この方法だと、ゴミがパック内に溜まったらパックごと交換しなければならず、
お金もかかりますし、毎回交換するのが面倒というデメリットが発生してしまいます。
また、フィルターパックを使わないという事は、「吸引力が衰えない」という利点も兼ね備えています。
一般的には布製のフィルターパックを掃除機内に入れる事で、
空気だけ循環させてゴミだけをパック内に閉じ込めています。
ですが、ある程度ゴミが溜まってくると、空気の通過が悪くなってしまいます。
キッチンペーパーで油を濾すのと同じで、揚げカスがあまりに多すぎると、ろ過するスピードが落ちますよね?
これと同じように、フィルターパック内に溜まったゴミ達が空気の循環を妨げてしまい、
結果的に吸引力の低下に繋がります。
一方、サイクロン式ではゴミは自重で下に落として、空気だけを外に逃がす事が出来るので、
パック式の掃除機に比べて、高い吸引力を長時間維持する事が出来ます。
なぜサイクロン集塵機は主流にならないのか
このような便利さから、多くのユーザーからの支持を得たサイクロン式掃除機は、
今となっては多くの家電メーカーが採用している主流な掃除機となりました。
では、集塵機はどうでしょうか。
素人目線で考えてみると、掃除機と集塵機は非常に似た構造で、私自身も自分の職業を説明する時は、
「工場で使う巨大な掃除機を売っています。」と説明しています。
ですが詳しい構造を見てみると、集塵機の大多数はサイクロンではなく、フィルターパック式を採用しています。
実は、これには訳がいくつかあります。
理由①:工場では相当小さなゴミまで吸引しなければいけないから
先程ご説明した通り、サイクロン式集塵機は遠心力によってゴミと空気を分離させる仕組みですので、
文字通り「遠心力」がポイントになってきます。
それなりの重さがある大きなゴミであれば、遠心力が加わると円錐を回るスピードが速くなるので
空気と分離させる事が出来ますが、極端に小さくて軽いゴミの場合は遠心力があまり加わらず、
空気と一緒に出てしまうという特徴があります。
家庭用の掃除機で吸引するゴミは、おそらく髪の毛や、ホコリ、食べ物のカスなどで、
基本的には肉眼で確認できるサイズになると思います。
しかし、工場で集塵機を使って吸引するゴミ(粉塵)の場合、0.1μ以下の小さいサイズまで吸わなければいけないなど、
家庭用よりも圧倒的に厳しい条件が求められることが多々あります。
特にクリーンルームと呼ばれる、一定以上の空気環境を保つことが厳格化されているような部屋であれば、
細かい異物までしっかりキャッチしてくれるフィルターの力を借りざるを得ないのです。
だからサイクロン集塵機は主流になりにくいのです。
理由②:ダイ○ン社が多数の特許を取得しているから
この話だけを聞くと、サイクロンは細かいホコリを吸引する事は出来ない。
というような印象を持たれるかもしれませんが、実はそんな事は全くありません。
ただ、サイクロン式でもフィルターパックと同等にホコリを除去できる掃除機もあります。
(補修効率が良いという言い方もできます。)
ただ、そのような最新技術は、ダイ○ン社が特許を取得しているため、簡単には再現できないというだけなのです。
具体的な例ですが、市場に出回り始めた頃の一般的なサイクロン掃除機はこちらです。
真ん中にある透明のスペースに円錐が取り付けられており、
その中でゴミがクルクル回りながら底面に落ちていくような感じです。
現在のダイ○ン社のサイクロン掃除機はこちらです。
よく見ると、上の方に小さな円筒が沢山ついていますよね?
このように、小型化した円筒を2層3層にいっぱい付けて、ゴミの大きさに応じ重力加速度や、
通過速度、モーターの回転数などを完璧に計算することによって、ダニなどの肉眼で見えないような
小さなゴミも綺麗に吸引できるようになりました。
正直、弊社も含めて、こんな発想は集塵機メーカーには無かったと思います。
だからこそ、このような素晴らしい仕組みを他社に真似されないように特許を多数取得して、自社のブランドを守っています。
似たような集塵機を出そうとすると、特許侵害スレスレ、もしくは完全にアウトになってしまい、
集塵機メーカーが最新のサイクロン集塵機を開発するのは、お金と時間が莫大に必要となるので非常に難しいです。
そのため、多くの集塵機メーカーは、サイクロンの円筒を集塵機の外側に取り付ける別売式で販売をしています。
理由③:正直、フィルターパックの方がメーカーは儲かるから
これはかなりぶっちゃけたお話なんですが、完璧なサイクロン集塵機がもし出来てしまった場合、
フィルターの定期注文が無くなるので、会社の収益自体は減ってしまいます。
集塵機のホースの太さはユーザー様にそれぞれよって違うので、フィルターパックの形状もそれぞれ異なり、
家庭用の掃除機とは違い汎用品が少ないのが現状です。
だから、自社の集塵機を使ってくれている限りは、フィルター交換による定期的な収益が見込めるのです。
例えば、毎月100台の集塵機を販売している会社の場合、
年間1200台。3カ月に1回の頻度で3000円/枚のフィルターを交換しているとしたら、
それだけで1440万円です。これはあくまでその年だけの話で、
10年前から同じ台数を毎年販売していると、フィルター交換費用は毎年積み上がっていきます。
10年後には、なんと、1億4400万円にもなります!
これは大きいですよね。
お金と時間をかけて開発した商品によって自社の収益が減る。
なんてことを率先して行う会社は少ないため、集塵機メーカーはどうしても腰が重たくなってしまうのかな?と思います。
ですが、ダイ○ン並みの集塵機を開発できた暁には、ランニングコストのかからない集塵機として市場を独占できるので、夢はあります。
サイクロン集塵機の解説まとめ
以上が「サイクロン集塵機ってなんなの?」でした。
この記事を一言で言うと、
ダイソンすげえ。の一言に尽きます。笑
言われてみればサイクロン集塵機ってそんなに発展していないよね?と思い、今回の記事を書いてみました。
いかがでしょうか?
私たち株式会社ディーオは、集塵に関するお困りごとに真摯に向き合い、最適な集塵システムをご提供する専門企業です。
元々、異物混入対策というのは自社で何とかするのが当たり前という風潮が古くからあり、
お金をかけて改善システムを開発する企業はあまり存在しておりませんでした。
そのため、集塵業界は未だ発展途上で、結果的に参考文献が異常に少ない特殊な業界という位置づけになってしまいました。
そんな全ての製造業者の進歩の為に、私達、株式会社ディーオは異物混入問題解決のリーディングカンパニーとして、
集塵機メーカーが公開してくれないような耳より情報や、実際の現場で役に立つ豆知識などを、
参考文献として皆様に提供するためにこのブログを書いております。
ただ、最近少しネタ切れで困っていますので、何か記事にして欲しい内容などがあれば教えてください!(笑)
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