はじめに ~粉塵が原因で発生する火災の対策とは?を解説する前に~
こんにちは!
ホコリ・異物混入対策の専門メーカーの株式会社ディーオです。
私たちは、集塵機の先端に取り付ける集塵フードなどをオーダーメイドで製造しています。
先日、YouTubeを見ていたら、突然オススメ欄に興味深い動画が出てきました。
え、なんで?と思った方も多いかもしれませんが、実は、集塵機業界で働いている人からすれば、
あーあ、そりゃそうなるよな… というのが正直な感想です。
これはいわゆる「粉塵爆発」と呼ばれる現象です。
集塵機業界では馴染みのある言葉ですが、普通の生活でこんな言葉を使う事はありません。
そこで今回は、粉塵爆発による火災について記事にしていきたいと思います。
最後まで是非読んで頂けますと幸いです。
なお、このブログは、あまり詳しくない方に向けた基礎的な内容を配信しているため、
専門用語を極力使わないようにしています。
既に詳しい方や専門家からすると説明が不足しているように感じる箇所がございますが、
ご容赦下さいますようお願いします。
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粉塵による火災とは?
燃焼と消火の原理
そもそも、火災がなぜ起こるのかという話なのですが、簡単に言うと、
[可燃性のある物質+酸素+熱=火]
という方程式が完成した時に火が起こります。
超当たり前ですが、ティッシュに火をつけたら普通に燃えますよね?
嚙み砕いて言うと、これは、[ティッシュ+酸素+熱]が同時に重なった結果として「燃える」という現象が起こっています。
- ストーブの上にセーターを置きっぱなしにしたら燃える。
- 車のガソリンタンクにたばこの火種が落ちたら爆発する。
このように言葉にすると超当たり前ですが、ロジックとして組み立てると、
[可燃性のある物質+酸素+熱=火]の方程式がいつも存在しています。
そのため、防火の観点で考えると、この方程式を作らないように気を付けるという事になりますし、
消火の観点で考えると、この方程式が崩れれば火を消すことが出来ます。
例)鍋パーティーをしている時、ガスコンロの横にあったティッシュが突然引火しました。
- 近くにあった水をかけて消す。
- まだ火が小さいので、近くにあった布を被せて消す。
などといった行動を取る方が多いと思います。
これも噛み砕いて言うと、
- 水をかけるのは、熱を冷ますための「冷却消火」
- 布をかけるのは、局地的に酸素を減らすための「窒息消火」
という行動を取っていることになります。
粉塵が引火する理由
燃えるものと聞いたら、皆様は何を思い浮かべますか?
紙、木、ガソリン、油など色々ありますが、おそらく真っ先に「粉塵!!!」と答える人は少ないと思います。
粉塵の種類にもよりますし、そのようなミクロな粉が燃えるから危ないという印象は、そこまで強く根付いていません。
ですが、実は粉塵のような粉体ってとても怖いんです。
専門用語を使わずにどうやって説明するべきかを考えていると、ちょうど良い動画を見つけたのでご覧ください。
要約すると、キッチンにある以下の4つの物をパイプに詰め、バーナーの炎を目掛がけて息を吹き出します。
最も大きく燃えるものはどれでしょう?
A. グラニュー糖
B. 洗剤
C. 食用油
D. 粉末ミルク
という検証動画です。
結果として、粉末ミルクが最も燃えて、量を増やせばバズーカ砲を作ることも出来ました。
動画内でも解説されていますが、物が燃えるために「酸素」が手助けをしています。
例えば、1センチ角の物体があったとします。
その場合の、酸素に触れる部分はこの赤字らへんですよね?
1㎝×4辺、つまり4㎝が酸素に触れる領域となります。
では、その1㎝の物質を、4つに切ったらどうでしょうか?
5㎜×4辺が4つあるので、8㎝が酸素に触れることになります。
粉塵のように更に細かくして、1㎜各にカットした場合、このようになります。
1㎜×4辺が100個あるので、40㎝が酸素に触れることになります。
このように、細かくなればなるほど、酸素濃度は増すという特徴があります。
たった1㎝の各を1㎜台にカットしただけで10倍も増えてしまうのに、毎日大量の粉塵が発生する工場で考えると
とんでもない酸素濃度になると思います。
何かの拍子に粉塵が宙に舞ったタイミングで、その付近に熱源があると、先程の動画のような現象が起こります。
集塵機と爆発の関係性
集塵工程で爆発が発生する原因
粉塵と火災の関係はなんとなくイメージできたと思いますが、
「そもそもそんなシチュエーションってあるの?」という疑問が残るかもしれません。
工場で粉塵は発生するものの、粉塵の真横で火をつけっぱなしにするという場面はないと思いますし、
爆発性のある物質と酸素が重なったとしても、そこに熱源が無ければ爆発は起こりません。
しかし、その粉塵をかき集める集塵機にはブロワが積んであるので当然電気を使用しますし、
中には定格電流値が20Aを超える製品もあります。
それだけ電気を使用する機械が経年劣化や静電気などによってバチっとなってしまった場合、
動画と同じような事が起こります。
爆発シーンを注意深く見ればわかりますが、普通の引火とは違って瞬時に燃え上がるため、
初期段階での消化が非常に難しく、単なるボヤ騒ぎでは済まないケースが多いです。
特に気を付けなければならない物質
先程から粉塵は危ないとお伝えしておりますが、もう少しだけ細かい話をさせて下さい。
粉塵爆発が起こる物質に直接火をつけても燃える事はほとんどありませんし、
多くの粉塵は、酸素濃度が12~13%以下の場合では爆発しません。
しかし、中にはわずか数%の酸素濃度でも爆発を招く材質もあります。
そんな材質の粉塵ともなれば、物質の体積に対する表面積の割合が非常に大きいため、
あっという間に酸素が満ち足りている状態になってしまい、一つ間違えれば大事故となります。
また粉塵には
- 爆発性
- 可燃性で導電性
- 可燃性だけど非導電性
の3つの種類があり、
それぞれ特徴がありますので、下記に載せてきます。
危険性としてはこのようにかなり細かくカテゴライズされているので、
対象の粉塵は燃えないから大丈夫と決め付けないようご注意し、集塵機を選定する際は、
念のため集塵機メーカーに直接問い合わせることをお勧めします。
防爆集塵機で、どこまで防ぐことが出来るのか
火災の可能性がある粉体を扱う工場では、普通の集塵機ではなく、「防爆集塵機」と呼ばれる集塵機が使用されています。
ですが、「これを買えば絶対に爆発は起こらない!」という製品ではないので、
特徴について是非ご理解頂きたいと思います。
簡易防爆集塵機
文字通り、簡易的に爆発を防いでくれる集塵機ですが、具体的には
「可燃性のある物質+酸素+熱=火」の方程式を機材内部で成立させないようにする集塵機です。
粉塵を集める機械なので、「可燃性のある物質」を無くすことは当然無理ですし、
ブロワから風を吸い込む集塵機は「酸素」を無くすことなど出来ないので、
「熱」を発生させない事を徹底するしかありません。
熱源を断ち切るために、ジャンクションボックスを使って粉塵と電気配線を遠ざける構造に加えて、
端子受けをしていないブロワを使って熱源を断ち切るような電気配線処理となっています。
防爆集塵機
簡易防爆集塵機のような粉塵爆発を起こさせない構造に加え、万が一それでも爆発した場合に備えて、
・爆発エネルギーによる集塵機本体の破裂防止
・爆風と火災の集塵配管への逆流防止
・安全に消化作業を行うための消火口
など、爆発の被害を最小限に抑える機能が備え付けられています。
価格はメーカーによって様々ですが、基本的には防爆集塵機は普通の集塵機の数倍も値段が高いです。
ですが安全を買うという意味で、この類の集塵機は値段を惜しんではいけないと私は思います。
吸引口での爆発
「防爆集塵機が安全である事はわかりましたが、その先端に繋ぐ吸引口はどうでしょうか。」
というようなご質問を頂戴する事がたまにあります。吸引口付近で爆発が起こる可能性について考えてみましょう。
結論からお伝えすると、そこまで気にしなくても大丈夫ですが、注意点はあります。
ただの吸引口であればそもそも熱源が存在しませんし、熱源(電気配線)があるような集塵装置だったとしても、
粉塵は瞬時に集塵機側に吸い込まれるためノズル内で大量に溜まる事はないので問題ありません。
可燃性のある物質+酸素+熱=火で考えると、仮に熱源を断ち切れなかったとしても、
可燃性のある物質がその周辺に集中しないので、熱源はあっても問題なし。
だから集塵装置内で爆発する可能性は低いという事です。
ただ、この原理を正しく理解せず、自作で集塵装置を製作した場合、
設計ミスによって粉塵が一か所に溜まりやすい構造や、熱源(電気配線)が剥き出しのまま使用してしまう事例があります。
そうなると発火の可能性は大いにあります。
集塵が専門ではない装置メーカーが製作してもそれなりのリスクがありますので、
異物除去を安全に行うのであれば、当社のような集塵装置の専門メーカーに直接お問い合わせ頂く方が無難ではあります。
さいごに
以上が「粉塵が原因で発生する火災とは?」でした。
いかがでしょうか。
集塵機はただ粉塵を吸うだけのシンプルな機械ですが、想定しづらいリスクがあるので非常に奥が深い分野になります。
Made in Japan=良い品質というブランドを保てるのは、
裏方で一つ一つ丁寧にホコリ除去を行ってきた作業者のおかげであります。
ですが、労働人口が減少する中、このクオリティを維持するために、集塵システムの構築は年々重要度が増しています。
この令和の時代においても、多くの作業者様が粉塵対策で頭を悩ませている中、
私達はその手助けとなる集塵システムの開発に日々没頭しております。
異物・ホコリ・粉塵対策でお困りの方は、まずは弊社のような専門メーカーにお問合せ頂く事を強く推奨致します。
株式会社ディーオは、集塵装置の製作のカウンセリングを無料で行っております。
ありがとうございました~。
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